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ELIZA — 言葉を返す機械と、人の受け止め方

相手の言葉を拾い、問い返す。1966年の会話プログラムは、返答を作る規則と、会話らしく感じる体験の距離を考える入口です。

会話が続くとき、機械は何を処理し、人は何を読み取っているのだろう。

1966年はCommunications of the ACMに原論文が掲載された年。ここでは原論文の再録を参照しています。

展示記事更新 2026-10-29

その時代、何を目指した?

画面に文章を入力すると、機械から文章が返ってくる。現在は身近なこの形式を、ELIZAはキーワードと書き換えの規則によって実現しました。

人が自由な文で話しかけると、同じ意味でも言い方が変わります。ELIZAの論文が扱ったのは、入力から手がかりの語を選び、最低限の文脈を取り出し、対応する返答の規則を選ぶ問題でした。

出典:ELIZA — A Computer Program For the Study of Natural Language Communication Between Man and Machine / Language Models are Few-Shot Learners

実際には、何をした?

原論文には、対話の掲載例と、その背後にある入力の分解・応答の再構成が記されています。表面の会話を読んだ後に規則の説明へ戻ると、同じやり取りを別の視点から見られます。

ELIZA本体と、対話の振る舞いを定めるスクリプトは区別されます。特定の会話スタイルを、あらゆる質問に答える知識そのものと考えないことが、当時の実装を読む手がかりです。

出典:ELIZA — A Computer Program For the Study of Natural Language Communication Between Man and Machine / Language Models are Few-Shot Learners

原コードを見つけ直す

後世に作られたELIZAの再実装と、Weizenbaumの原コードは同じ資料ではありません。ELIZAGENは、MITの所蔵資料から原コードを見つけた経緯と、遺族の許可によるCC0公開を記録しています。

下の抜粋は、原コードを転記した資料のCHANGEサブルーチンの一部です。命令を読み取り、登録された語と照合し、認識できなければメッセージを返します。会話本文そのものや、当時の端末画面の写真ではありません。

MAD-SLIP原コードの転記から抜粋
CHANGE      PRINT COMMENT $PLEASE INSTRUCT ME$                                  001400
            LISTRD.(MTLIST.(INPUT),0)                                           001410
            JOB=POPTOP.(INPUT)                                                  001420
            T'H IDENT, FOR J=1,1, J.G. 7                                        001430
IDENT       W'R G(J) .E. JOB, T'O THEMA                                         001440
            PRINT COMMENT $CHANGE NOT RECOGNIZED$                               001450
            T'O CHANGE                                                          001460

Joseph Weizenbaum(原コード)/Anthony Hay(転記)。ELIZAGENの公開説明に基づくCC0。原資料の行番号を保持。

出典:Original ELIZA — 原コードの再発見と資料の来歴 / ELIZA — MAD-SLIP原コードの転記

実現を支えたしくみ

ELIZAは、入力を規則で分解し、部品を組み直して返答しました。会話のための規則集を交換できる設計です。大量の文章から次のトークンの確率を学ぶ現在の言語モデルとは、返答を用意する方法が違います。

入力に含まれる手がかりを探し、文を部分に分け、別の形に組み直す。この手順を理解すると、「自然に見える応答」と「入力の内容について幅広い知識を持つこと」を切り分けられます。

出典:ELIZA — A Computer Program For the Study of Natural Language Communication Between Man and Machine / Language Models are Few-Shot Learners

何が変わり、何が残った?

ELIZAの規則は、言葉を組み直すだけでも会話らしさを生むことを示します。一方、この結果だけで、機械が人間と同じ仕方で理解したとも、現在の言語モデルがELIZAと同じ規則の集まりだとも結論できません。

編集の視点:「返事が自然に聞こえた」と「質問の意味を正しく扱えた」は、別々に確かめられます。説明の仕組みを知ると、会話の印象だけで能力を判断せず、言い換えや例外を試す理由が見えてきます。

出典:ELIZA — A Computer Program For the Study of Natural Language Communication Between Man and Machine / Language Models are Few-Shot Learners

出典をたどる

本文は資料をもとにした日本語の解説です。引用画像は個別に出典を表示しています。研究の結果と現在の製品の提供条件は区別して読んでください。

  1. 原論文の再録ELIZA — A Computer Program For the Study of Natural Language Communication Between Man and Machine Joseph Weizenbaum / Communications of the ACM(UMBC再録) · 1966-01 · 原論文掲載

    読む場所:本文のキーワード、decomposition、reassembly、scriptの説明

    会話規則に基づく入力分解と返答再構成。

    資料確認 2026-10-29
  2. 研究論文Language Models are Few-Shot Learners Brown et al. / arXiv · 2020-05-28 · arXiv初公開

    読む場所:Abstract; Approach; Measuring and Preventing Memorization Of Benchmarks; Limitations

    評価時に重みを更新しない少数例の文脈内学習と、課題依存の成績・評価汚染の限界。

    資料確認 2026-10-22
  3. 資料アーカイブの解説Original ELIZA — 原コードの再発見と資料の来歴 Jeff Shrager / Team ELIZA · 2021-05-23 · アーカイブ紹介の署名日。ELIZAの研究年ではない。

    読む場所:(Re)Discovery of the Original ELIZA; SOME NOTES ON READING THE CODE

    MITの所蔵資料からのMAD-SLIP原コード再発見、遺族によるCC0公開、原コードと後世の実装の違い。

    資料確認 2026-10-29
  4. 原資料の転記ELIZA — MAD-SLIP原コードの転記 Joseph Weizenbaum(原コード)/ Anthony Hay(転記) · 1965–1966 · 原コードの時代。転記・公開は後年。

    読む場所:CHANGEサブルーチン冒頭、PLEASE INSTRUCT MEからCHANGE NOT RECOGNIZEDまで

    入力と命令の照合、制御の移動を含む原コードの一部。

    資料確認 2026-10-29
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