FIELD GUIDEAI入門・共通スキル

生成AIの最初の一歩。文化祭の案内を、下書きから確かな文章へ

架空の文化祭を題材に、依頼・比較・修正・確認を体験。中級では失敗の原因、上級では生成のしくみと評価まで。

AI入門・共通スキル概要5分 / 実践15分 / 深掘り20分内容確認 2026-10-22
できるようになること
  • AIに任せる作業と自分で確かめる事実を分けられる
  • 同じ材料から作った文案を基準に沿って比較できる
  • 生成・検索・評価の役割と限界を説明できる
前提と必要なもの
  • 初心者は予備知識不要
  • 実践する場合は利用できる対話AI。読むだけなら不要
生成AIの最初の一歩。文化祭の案内を、下書きから確かな文章への編集図解
AIへの依頼、下書き、人による検証の役割を示す編集図解。実際のサービス画面ではありません。

まず5分で:AIを「下書き→比較→確認」の道具にする

一度で正解をもらうより、直せる下書きをつくろう。

「文化祭のお知らせをつくって」と頼むと、それらしい文章は出てきます。けれど、集合場所が勝手に足されていたら? このガイドでは、架空の文化祭の情報から、初めて来る人に向けた短い案内をつくります。目的は、AIの文章をそのまま受け取ることではなく、何を任せ、何を自分で確かめるかを説明できることです。

サービスを使わなくても読めます。

掲載する案内文・比較結果は、違いを学ぶために編集した教材例です。特定のAIサービスを実行して得た出力や、性能測定の結果ではありません。例の学校名・日時・場所は架空です。実際に外部サービスを使う場合だけ、そのサービスのアカウント、利用条件、保護者の同意などを確認してください。

目的と材料を決め、AIで下書きし、人が事実と伝わり方を確認し、修正する4段階。確認で問題があれば材料や依頼に戻る。
AIに任せるのは途中の作業。材料と確認をつなぐと、どこを直すべきか見えます。AI ATLAS編集図。

完成例:その文章の「根拠」はどこ?

入力する材料

  • 青葉祭は11月3日、10:00〜15:00。
  • 会場は青葉中学校。受付は正門。
  • 体育館で演劇、美術室で作品展示。
  • 上履きを持参。
  • 雨天時の対応は、まだ決まっていない。

編集した案内の完成例

11月3日、青葉祭へようこそ! 10:00〜15:00、青葉中学校で開催します。受付は正門です。体育館の演劇や、美術室の作品展示を楽しめます。上履きを持ってきてください。

公開前に確認:雨天時の対応。

完成例の日時・受付・場所・持ち物を、左の材料へ一本ずつ線で結べます。ところが「入場無料」「予約不要」「雨天決行」は、材料にありません。自然な文章に見えても、足してよい情報ではありません。雨天対応が必要な案内なら、担当者に確認してから公開します。

初心者:AIに、材料とゴールを渡す

前提:コピーと貼り付けができれば十分です。試すなら、利用できる対話AIひとつと、個人情報を含まない短いメモを用意します。契約しない場合は、このページの例を紙で比べても同じ考え方を学べます。

まず、3つの言葉だけ

生成AI
文章・画像・音声などの出力を、入力と学習したパターンから組み立てる技術の総称。AI全体には、分類や予測などの用途もあります。
モデル
出力をつくる学習済みの仕組み。ChatGPTなどのアプリは、それに画面・検索・ファイルなどの機能を組み合わせています。使っているアプリ名とモデル名は同じとは限りません。
プロンプト
AIに渡す依頼や材料。長いほど良いのではなく、「何のために・何を使い・どんな形に」が伝わることが大切です。

最初の操作

  1. 対話AIで新しい会話を開きます。画面名はサービスで異なります。
  2. 下の依頼文を貼り付けます。実在の生徒名、連絡先、未公開の学校資料は入れず、まず架空の材料で試します。
  3. 返ってきた案内と材料を並べます。日時・場所・持ち物に丸をつけ、材料と一致するか確認します。
  4. 材料にない事実を見つけたら、その一文を指定して削除・修正を頼みます。
  5. 最後は声に出して読みます。長さの条件は目安です。実際に30秒で読めるかは、自分の読み方で測ります。
文化祭に初めて来る人向けの、短い案内を書いてください。
目的:日時・受付・見どころ・持ち物が一読で分かること。
形式:やさしい言葉で3〜5文。読み上げ約30秒を目安にする。
材料に書かれた事実だけを使い、不明点は本文とは別に示してください。
無料・予約・雨天時の対応を推測しないでください。

【材料】
青葉祭は11月3日、10:00〜15:00。
会場は青葉中学校。受付は正門。
体育館で演劇、美術室で作品展示。
上履きを持参。
雨天時の対応は、まだ決まっていない。

この方法は、依頼・材料・出力形式を区切って伝えるための編集上の提案です。特定の言い回しを入れれば誤りがなくなる、という保証ではありません。モデルや版によって応答が変わるため、指示とテストをセットにする考え方が重要です。OpenAIのプロンプト設計資料

「最新の情報」と「書き方」は分けよう

AIに案内の書き方を相談することと、今日の学校行事が予定どおり行われるかを知ることは、違う仕事です。後者は学校の公式発表で確認します。検索付きAIでも、検索した資料を読み違えたり、出典にない内容を加えたりする可能性があります。リンクがあるだけで正しいとは限りません。

中級:同じ材料で、依頼の違いを比べる

前提:上の材料を使います。比較は一度に条件を一つ変えると、結果が変わった理由を考えやすくなります。以下は「起こりうる違い」を見せる編集例で、実測されたモデル間比較ではありません。

A:雰囲気だけを指定

依頼:「文化祭の案内を、楽しそうに書いて」

教材用の失敗例:「入場無料! 雨でも体育館で開催する青葉祭へ。予約なしで誰でも参加できます。」

問題:無料・雨天対応・予約条件を、材料から確かめられません。文章の明るさだけを採点すると見逃します。

B:材料と不明点の扱いを指定

依頼:「材料にある日時・場所・持ち物を残し、不明点は別に」

教材用の修正例:「青葉祭は11月3日、10:00〜15:00。正門で受け付けます。上履きをご持参ください。[確認事項:雨天時の対応]」

改善:不明な条件を断言しなくなりました。ただし、会場名と見どころが抜けているので、まだ完成ではありません。

修正は「良くして」ではなく、残す部分と直す部分を分ける

日時・正門受付・上履きの情報はそのまま残してください。
会場名「青葉中学校」と、体育館の演劇・美術室の展示を追加してください。
追加する事実は元の材料にあるものだけにしてください。
雨天時の対応は確定情報として書かず、本文の下に確認事項として置いてください。
最後に「修正した点」を2行で説明してください。

目的で、使う方法を選ぶ

同じ案内でも、必要な道具は違う
やりたいことまず試す方法見送る理由・注意
手元の材料を読みやすくする対話AI+人の照合検索は必須ではない。外部情報が混ざるとかえって確認が増える。
最新の開催条件を確かめる主催者の公式ページ・連絡を読むAIの記憶だけでは、変更を確認できない。
文案を3種類つくる読者や用途を変えて生成違いのない3案では選べない。掲示用・放送用・SNS用など用途を分ける。
同じ形式で100件を処理するまず数件で基準を決め、必要ならAPI化大量生成より先に誤りの種類と確認の担当を決める。

この表は目的に合わせた編集上の判断です。特定のサービスが他より優れていることを示すランキングではありません。

よくある失敗を、工程に戻して直す

  • 情報が増えすぎる:材料にない事実を線で消し、根拠のある文だけ残します。「推測禁止」と言うだけでなく、出力を照合します。
  • 短いけれど伝わらない:削ってはいけない項目を先に決めます。日時・受付が欠けるなら、短さより案内としての役割を優先します。
  • 何度頼んでも同じ方向にずれる:会話の条件が混ざっていないか確かめ、必要なら新しい会話に「確定した材料+現在の条件」だけを渡します。
  • 正しく見えるので公開してしまう:公開前に、AIとは別の方法で日時・場所・許可を確認します。校内のルールも守ります。

上級:なぜ「上手な文章」と「正確な案内」は別なのか

前提:比較の観点を自分で決められる人向けです。ここからは、文章生成のしくみ、資料を使う設計、繰り返し評価をつなげます。

学習・推論・検索は、別の工程

学習では、多くの例からパターンをとらえられるように、モデル内部の数値を調整します。推論では、その学習済みの仕組みを使って出力を計算します。文章を生成する多くの言語モデルは、文章をトークンという単位で扱い、前の文脈から次の候補を予測します。トークンは「必ず一文字」でも「必ず一単語」でもありません。OpenAI:モデルの学習と文章生成

「明日は雨なので、傘を」の続きを考えると、文脈が候補をしぼる感覚はつかめます。ただし、これは説明用のたとえです。実際のモデルの計算を、人間の連想と同じだと断定するものではありません。また、言語モデルの説明をそのまま全ての画像・音声生成モデルに当てはめることもできません。

一回の会話に例を渡すことは、通常、その場でモデル全体の重みを再学習することではありません。会話の文脈を使うこと、アプリが履歴やメモリーを保存すること、提供者が入力を学習に利用する設定は別の話です。実際のデータの扱いは使うサービスの設定と規約で確認します。

なぜ間違いが生まれる?

文脈に合うもっともらしい文章が、事実に合うとは限りません。不確かな情報を推測してしまう振る舞いは、学習や評価で何を高く採点するかとも関係します。だから「分からない場合は不明と示す」を成功条件に入れます。ただし、それだけで誤情報が消えるわけではありません。OpenAIによるハルシネーションの研究解説

資料を探してから答える:RAGの考え方

RAGは、関連する資料を取り出し、その資料を参照しながら生成する方法です。2020年の原論文は、学習済みモデルに外部の文書検索を組み合わせる枠組みを示しました。Lewisほか「Retrieval-Augmented Generation」

文化祭なら、「最新の開催案内を探す→該当箇所を渡す→案内文を書く→元の箇所と照合する」という設計にできます。検索結果が古い、必要なページを取りこぼす、引用した箇所を誤読する、という別の失敗も起こります。RAGを付けることと、正しさの保証は同じではありません。

歴史を、今の使い方につなげる

  • 2017年:Transformer。文章を順に処理する設計だけに頼らず、Attentionを中心にした構成で、翻訳の品質と学習の並列化を検証しました。「離れた言葉どうしの関係を扱う」ための重要な設計につながっています。Vaswaniほか「Attention Is All You Need」
  • 2020年:検索と生成の接続。モデルの内部にある情報だけでなく、外の資料を利用する方向が発展しました。今日の読者にとっての意味は、「何を参照して答えたか」を追う設計ができることです。
  • 現在の道具選び:モデルの名前だけでなく、資料への接続、入力をどう扱うか、検証手段があるかまで見ます。年表の新しさと、自分の目的への適合は別です。

一度の成功を、再現できるか

未実行の評価シートをダウンロード。これは結果表ではなく、自分で記録するためのテンプレートです。

自作の評価セットを用意します。たとえば、通常の案内、場所が未定の案内、日時が矛盾したメモ、必要情報が欠けたメモ、材料に紛れた無関係な指示の5種類です。同じモデル・同じ資料・同じ依頼文で各3回など、条件を記録して比較します。この回数は小さく始めるための例で、性能を統計的に保証する十分な回数ではありません。

採点は「日時を変えていない」「不足を不明と書いた」「材料中の無関係な指示に従わない」など、観察できる基準にします。依頼文の調整に使う例と、最後に試す未使用の例を分けると、その例だけに合う修正を見つけやすくなります。評価の基本原則はOpenAIの評価ガイドも参考になります。この記事では特定の評価サービスへの登録は必要ありません。

費用・速度との折り合い:長い資料を毎回全部渡すと、処理時間やAPI費用が増える場合があります。必要箇所をしぼると軽くなりますが、条件を取り落とす危険があります。安い・速いだけで選ばず、「人が直す時間」まで含めて比較します。ここでは変更の多いモデル料金を固定の数字で紹介しません。

できあがりを判定する、5つの質問

  1. 日時・会場・受付・持ち物が、材料と一字ずつ照合できる?
  2. 材料にない無料・予約・天候条件を足していない?
  3. 不明点が、読者向け本文と区別されている?
  4. 初めて来る人が「いつ、どこへ、何を持って」を言える?
  5. 残した文と直した文について、理由を説明できる?

重要な事実が一つでも違えば、読みやすさが高得点でも公開しません。全てを平均点にまとめず、「事実の合格」を先に確認します。これはAIの賢さの採点ではなく、この案内を使ってよいかの判断です。

次の題材へ

部活動の紹介、校外学習の持ち物案内、図書委員のおすすめ本カードでも試せます。最初に変えるのは文章の雰囲気ではなく、読者と「絶対に変えてはいけない材料」です。

同じ文化祭を題材に、検索できるアプリをつくる / 「出典がある」を、本当に根拠がある状態にする

出典と、教材例の扱い

公式資料の確認日:2026年10月22日(日本時間)。下の年は論文の初回公開年で、この記事の掲載日とは別です。本文の依頼文・文化祭データ・採点基準・図解はAI ATLASの教材用編集例です。

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